『カメラを止めるな!』に見るバズ・マーケティングの本質(映画レビューNO.1)
話題沸騰の『カメラを止めるな!』、ようやく観てきました!
「制作費300万円でまさかの大ヒットに」
「前情報は入れずに観たほうがいい!」
「とにかく笑える、とにかく泣ける」
などの意見がSNSを駆け巡った本作。単純な映画レビューというよりも、どうしてここまでバズったのか。その本質に迫ってみます。
※あらすじにはあまり触れないですがそれでも少しネタバレありますので注意!
「つくり手」の心を掴んだこと
『カメラを止めるな!』のバズ構造は、以下のようだったと思います。
一部のオピニオンリーダーの口コミ
↓
タレントに波及
↓
世の中に口コミが溢れる
↓
テレビなどのマスメディアが取り上げる
↓
さらに人が殺到する
美しいと言ってもいいほど「綺麗な」バズり方ですね。。。徐々に社会現象化されていく様を、多くのSNSユーザーが目の当たりにしたと思います。
ここで僕が重要だったと思うのは、一番最初の“オピニオンリーダーの”というところ。インフルエンサーではなくオピニオンリーダーと書いたところがポイントです。
バズを狙う際、発信力のある人の口コミからそのフォロワーへと波及していく、というのは一般的な構造ですが、ここで大事だったのはその発信の担い手が「どんな人だったのか」です。
映画の場合、単純に有名な人がオススメするよりも、アートや芸術がわかる人、もっと言うと、何かを創り、生み出そうとしている人(=つくり手)のオススメのほうが、遥かに響きやすい。それは、つくり手にとって他の作品を薦めるという行為が、そのまま自分のつくり手としてのセンスを表すようなものだから。変なものを変に薦めても、自分の評価は下がってしまう。
アイドルの「この映画面白かったです〜!」は流行っていることの裏付けにしかならないけれど、つくり手の「この映画面白いです!」は、「その人が言うんだったら見てみようかな」という力を持っているのには、こういった背景があると思います。
そして、つくり手の評判は、俳優やアーティストなど、大物著名人を動かす。著名人にとって近い存在だし、リスペクトの対象になり得る人だからです。
『カメラを止めるな』は、つくり手の物語。特に映像だったり、絵だったり文章だったり、「自分の作品」を生み出そうと日々努力を重ねる人たちにとっては、圧倒的に「わかる。」物語だし、圧倒的に感動できる物語でした。
つくり手を味方につけたことが、『カメラを止めるな』の成功の要因だったのだと思います。
“大使“を生み出した
上述の「つくり手」の中でも、ひときわ猛威を振るっていた(笑)のは、人気WEBライターのヨッピーさんだったと思います。
「カメラを止めるな!」っていう映画が完全に、マジの本気で、圧倒的に面白かったのでこのツイートを見た人は全員かならず「カメラを止めるな!」を見てください!!!!!!
— ヨッピー (@yoppymodel) 2018年7月15日
↑のツイートを皮切りに、何度もSNSにオススメコメントを投稿し、自身の影響で『カメ止め 』を見に行った人のツイートをサーチしてリツイートしまくり、全国展開が決まったニュースにも歓喜のコメントをアップしていました。
ヨッピーさんといえば、抜群のおもしろさを誇る記事を投稿している超人気ライターで、かつWEB記事転用(盗作)問題の一件で、世の中のライターを中心としたつくり手の注目を得ているオピニオンリーダー。SNSで投稿を見た人は、そんな人にここまでさせたこの映画は、一体どれだけ面白いんだ!?と思ったはず。(僕もその一人ですw)
この時、ヨッピーさんは完全に“大使”化していたと思います。カメ止め親善大使。ここまでさせたのは、世の中のつくり手を心酔させる、この作品の魅力にあったのだと思います。
広がるコンテンツの本質とは
広告マーケティング全般に言えることですが、なにかを広めていくためには、いかにしてリーチを広げるか、という考え方に陥りがちです。
でも、『カメラを止めるな』にはそのための費用(広告費)がなかった。その代わりに、つくり手という、最も強力なオピニオンリーダーたちに刺さるコンテンツだった。それが“カメ止めバズ”の要因なのだと思います。
インフルエンサーに広めてもらうにしても、ただフォロワーの多い人が「よかったです、見てね!」というのではなくて、“影響力のあるセンスのいい人”が、“大使”のような役割を果たすことで、実際に人を動かす。こういう、口コミの“質”が、広がるコンテンツの質なのだと思います。
企業がマーケティングを仕掛ける時にこれを意識して設計するのは難しいとは思いますが、「どんな人に刺さるべきなのか」をきちんと考えてプロダクトやコミュニケーションをつくることは、口コミの質を高めるうえで非常に重要なのだと思います。
『カメラを止めるな』という映画は、制作者のみなさんの「いいものをつくろう」という情熱によってできたものだと思いますが、マーケティング的な視点で読み解いてもすごく良くできたコンテンツだ!というのが、今回の結論です。
ではまた。
み